日本生まれのハイチュウは、北米を中心に海外ではみんなが配れるフルーツチューとして独自の立ち位置を確立しました。スティックでもパウチでも常備しやすく、噛み心地と果実感の強さが口コミで広がったのが特徴です。さらに球場やイベントなど体験の場で試食機会を作り、SNSでの二次拡散につなげたことも大きい要因です。
本稿では、ハイチュウの海外人気の起点、スポーツ連携、現地生産やフレーバー戦略、パッケージ刷新、そして英語ロゴへの転換まで、ハイチュウの国際進出の筋道を丁寧に解きほぐします。
もくじ
海外人気のきっかけ
ハイチュウの海外ブレイクは突発的なバズではなく、現地での小さな成功の積み重ねから生まれました。日本滞在経験者や留学生コミュニティ、アジア系スーパーを起点とした手渡しの推薦が初期の火種です。帰国後に友人へ配る、イベントで配布する、職場のデスクに常備するといった地道な接点の増加が店頭の動きに反映され、メーカー側の投資判断を後押ししました。これ以降は販路開拓と認知施策が回転し、ニッチからメジャー棚へシフトしていきました。
MLBの影響
北米浸透を語るうえで、プロスポーツの中でもとりわけ野球の影響は外せません。ベンチにどっさり置いてあるおやつとして選手間で自然に共有され、ハイチュウを食べるその様子が海外中継やSNSに乗って可視化されたことが大きな要因です。観客席でのサンプリング、スタジアム売店での露出、ダンスカム等の演出と組み合わさり、球場体験の一部として記憶されました。結果、試合帰りに量販店で手に取る行動が増え、家庭の常備菓子へと移行。体験→購買の導線を球場が担った好例です。
現地生産と供給力
ハイチュウの海外需要の伸びに合わせ、2015年に米ノースカロライナ州メベインで初の米国工場が稼働しました。2024年には同州オレンジ郡に第2工場計画が公表され、供給安定とリードタイム短縮、SKU拡張への下地が整いました。こういった現地生産は棚取り(フェイス確保)にも効き、量販・ドラッグ・コンビニの多業態で販売面のスケールを後押しし、ハイチュウの海外進出の大きな土台となっていきました。
フレーバー開発の巧みさ
北米では170種超の開発資産を土台に、ドラゴンフルーツやマンゴーなど映える南国系、酸味強調のサワー、ひと口サイズのバイツ、2層ブレンドの断面美など、写真映えと香り立ちを両立させて回転を作りました。2018年の「East meets West」投票でドラゴンフルーツが選ばれたように、SNS投票や限定箱で参加して決める体験を設計。テストは小ロット・短サイクルで、地域限定や小売専用SKUから、反応が良ければ定番化、伸びなければ素早く入替のA/B運用が基本です。甘味・酸味・噛みごたえの三点を数値化し、色設計とネーミングも現地嗜好に最適化されてきました。
ロゴはいつ英語になった?
日本国内でのパッケージ刷新により、従来のカタカナ中心から英語「HI-CHEW」を前面に押し出すデザインへと順次移行しました。海外市場での認知資産を国内にも還流させ、棚での視認性と国際感を高める狙いです。英語ロゴの統一は、観光客や越境ECの増加にもマッチし、国境を越えるブランド体験を一本化されていきました。また国内ユーザーにとっても「世界標準のハイチュウ」というポジティブな印象が強まり、ギフトや配り菓子としての汎用性が上がりました。
北米のパッケージとブランド刷新
北米では若年層の店頭接触を意識し、フルーツ断面の見せ方や色設計、ロゴの配置がチューニングされています。またペグ袋・スタンドパウチを中心に、棚の遠目でも「果実感」が伝わる画づくりに磨きをかけています。加えてマスコットの露出やソーシャル上のテンプレ画像配布など、UGC(ユーザー生成コンテンツ)と連動した施策も強化されています。結果として、試食→投稿→拡散→再購入の循環が回りやすくなり、広告費だけに依存しない認知形成が可能になりました。
常駐の菓子としての価値
国内、海外問わずハイチュウがデスクや車内に置かれる理由は、手が汚れにくい個装、噛みごたえによる満足感、そして“ご褒美未満・日常以上”の価格帯にあります。スティックで“まずは味見”、気に入ればパウチで“常備”という拡張のしやすさも強み。サワー系や限定ミックスの回転で飽きを抑え、食べるシーンを朝の気分転換、午後の集中回復、ドライブのお供へと広げてきました。サイズと価格の最適点を複数用意することで、リピートの接点が増えます。
競合との差別化
北米のチューイングキャンディ棚は強者揃いですが、ハイチュウは独特な果実感と食感でポジションを確立しています。単なる甘味ではなく香り立ちで記憶に残し、限定フレーバーと投票企画で参加性を担保させています。さらに球場・学校・オフィスといった共有の場で周囲の人に配りやすいという点が、指名買いを後押しします。結果として、SNSの一過性を超えて「常備菓子」に昇格する道筋ができ、価格競争に巻き込まれにくい価値を維持しています。
データで見るハイチュウの伸長
ハイチュウの売上や生産能力の拡張、店頭フェイスの増加、限定フレーバーの回転率など、複数のKPIが海外定着を裏づけています。特に現地生産の寄与は大きく、量販、ドラッグ、コンビニ、クラブストア、アジア系グロサリーまでの幅広い領域で、欠品率の低下とSKU展開の柔軟化により小売信頼を高めました。SNS上でも球場で知った友人にもらったといった自然発生的な言及が継続し、広告的メッセージでは拾いきれない文脈価値を積み増しています。サプライと需要、物語と体験が噛み合うことで、成長カーブは持続してきました。
まとめ
ハイチュウの海外躍進は、コミュニティ発の口コミ→MLB球場での体験露出→現地生産での安定供給→多彩フレーバーの小ロット高速試行、という連鎖で加速しました。配りやすい個装が“常備菓子”化を後押ししました。さらに北米ではパッケージ刷新で若年層接点を拡大し、日本でも2024年2月から英語ロゴ「HI-CHEW」を前面化して国際的な統一感を強化するようになりました。体験と供給の最適化が指名買いと継続成長を支えています。







